757:名無しさん@おーぷん2015/08/19(水)10:19:27 ID:S2l



微オカルト・長文注意。



小学生だった頃の話。

通学路の途中に「首吊りの家」と呼ばれている空き家があった。

その空き家は建築途中で施主が首を吊って自殺した。建築は中止されたが、後は内装するばかりだったので、

壁はむき出しで室内ドアなどもなかったが窓はいれてあって外から中が丸見えだった。



私はいつも近所の同い年の子と2人で通学していた。首吊りの家は子供にも有名で脚色された怖い話をいろいろ聞いていた。








臆病な子供だった私は恐れつつもほかにもたくさんの子供たちが回りを歩いていたし、通勤通学時間帯は駅前の人通りの多い場所

だったからそれほど意識していたわけではなかった。



ある日、一緒に通学する友達が学校を休んだ。一人で登校したが行きはほかの子たちが歩いていたので後ろをついていった。

問題は帰りだった。一人で首吊りの家の前を通るのが怖い。誰か歩いている人がいたらくっついて帰ろう。そう思った。

だが、首吊りの家に近づいたとき、こんなときに限って人っ子ひとりいない。ベッドタウン的な市であったので昼間は車すら少ないのだ。

迂回路はあるのだがそっちの道も大きなどぶ川があっていろんなものが落ちていて怖いと思っていた。以前、猫の腐乱死体を見たのだ。



延々とどぶ川沿いを歩くよりさっさと首吊りの家の横を通り抜けたほうがよい。



私は意を決して首吊りの家への道を早足で歩く。見ないでおこうと思ってもつい窓に目が行ってしまう。

天井もまだないので太い梁がむき出しになっていた。檜なのか明るい色の木材が美しく組まれていた。



そして、私は見た。



梁に縄がかかっていた。太い白い縄が。縄から妙に黄色い顔をしたおじさんがぶら下がっていた。おじさんは左右に揺れていた。

目が離せない。時間が止まったみたいだった。おじさんがゆっくり目を開いて自分を見た気がした。



我に返った私は駆け出し、家に走りこんだ。



家には祖母しかいなかった。私の父母は共働きで普段は祖母しかいないのだ。この祖母は今でいうアルコール依存症で孫には無関心で

昼間からコップ酒をちびちびやるような人だった。大きな丸火鉢の前でちびたタバコを吸いながら祖母は火鉢のふちにいつものように

コップ酒を置いていた。



尋常でない様子で孫が家に飛び込んできても見ることもしやしない。何を言っても無駄だろうな。

子供心にそう思って私はランドセルを放り出すと誰にも言わずに忘れることにした。

だがそう簡単に、忘れることはできない。繰り返しぶらさがって揺れてたおじさんの顔を思い出した。だが誰にも言わなかった。言い方も

わからなかった。

翌日からはまた首吊りの家の前を歩いて学校に通った。窓の中には何もなかった。梁はむき出しのままだったが回りの木組はくすんでいき

窓も白く汚れていった。

ひとりで帰るときは迷わずどぶ川の道を選んだ。

それからの数年間、おじさんが何度か私の夢の中に出てきたり人ごみの中にふっといたような気がしたりしていた。

それも大人になるにつれて滅多に思い出さなくなった。



今となってはこれが本当に起こったことなのか、子供の恐怖心が作り出した幻影なのか、夢なのか、なにもわからない。

新たに別の人が首を吊ってなくなったということはなかったと思う。そんな話は聞かなかった。

昨日久しぶりにおじさんが夢に出てきたので書いてみました。



首吊りの家自体は何年も前に取り壊されて何軒か並んだ貸し店舗になっている。立地はよいのに店が続かない場所として有名。

家の持ち主の自殺原因は不明。羽振りのよい自営業者だったらしい。自殺した人と私が見た「おじさん」が同一人物かも不明。



引用元: ・今までにあった修羅場を語れ【その12】